大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ラ)402号 決定

抗告人 福原秀夫 外一名

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人等の負担とする。

理由

抗告人等代理人は、「原決定を取り消す。本件更生計画を認可しない。」との裁判を求め、その理由として別紙抗告理由書並びに「更生計画の遂行不能理由の追加について」と題する書面記載のとおり主張した。

よつて按ずるに、本件記録によると、次の事実を認めることができる。すなわち、日本糧穀株式会社は原裁判所に会社更生法による更生手続開始の申立をし、原裁判所は昭和二十九年六月一日午前十時右申立を理由ありと認めて、同会社について更生手続開始決定をし、同時に東京都中野区桃園町二十六番地井野碩哉をその管財人に選任した。同管財人は更生計画案を作成して原裁判所に提出し、その後右更生計画案は原裁判所の許可を得て数次に亘り修正せられた結果、末尾添付の本件更生計画案記載のとおりのものとなつた。そして、昭和三十一年五月二十四日午前十時の関係人集会において、右更生計画案は可決せられ、次いで同月三十日原裁判所は、右更生計画案は会社更生法第二百三十三条第一項所定の要件を具備しているものと認めて、本件更生計画を認可する旨の決定をしたものである。

ところで、抗告人等の抗告理由第一点は本件更生計画は遂行不可能のものであるというにある。そして、抗告人等は本件更生計画の遂行不可能なる理由として、

(一)、海外における屠畜場の変化

(二)、我が国における家畜飼育頭数の今後

(三)、我が国における屠畜場の今後

(四)、東京都内における屠畜場状況と日本糧穀株式会社(以下単に更生会社という)工場の地位

(五)、都営芝浦屠場の屠畜能力と設備の増設工事

(六)、更生会社工場における事業見透しについて

(七)、認可された本件更生計画により最高可能限度

以上の諸項目について言及しているので、以下順次判断する。

(イ)  抗告人等は、「世界各国とも大都市の屠畜場は遊休施設化し枝肉の冷蔵施設と取引施設が消費都市屠場の中心をなすように変化してきた。我が国の大都市屠畜場も同様の途を辿ることは必至であるのに、かかる傾向を無視した本件更生計画は遂行不可能である。」旨主張する。しかしながら、消費都市の屠畜場が将来枝肉の冷蔵施設や枝肉の取引施設の拡充整備に伴い漸次衰微してゆく傾向は、理想として望ましいものであろうけれども、本件更生会社が近い将来において直ちに抗告人主張のような途を辿ることが必至であるとの点はこれを認めるに足る何等の疏明資料が存しない。のみならず、枝肉市場の発展のためには、資金問題に加うるに冷蔵貨車等の運搬機関の整備を必要とするものであるから、枝肉市場ができたからといつて直ちに本件更生会社の屠畜場が衰微するものと断定することは早計の譏を免れないであろう。従つて此の点に関する抗告人等の主張は採用できない。

(ロ)  抗告人等は、「我が国における大家畜飼育頭数は昭和二十九年度が最高で三、九一八、〇〇〇頭であり、昭和二十八年度に比して二、〇〇〇頭を増加したのみで、戦後におけるその上昇率は限界に達しているものである。昭和三十一年度以降においては飼育頭数の増加は絶対にありえない。

しかるに、本件更生計画は本件更生会社の実施予定頭数は逐次増加するものとして樹立されているもので、農業政策の基本理念を無視し畜産経済の実情から離したもので遂行不可能である。」旨主張する。本件更生計画によれば、弁済資金は原則として更生会社の屠畜事業運営による収益を以てこれに当てるものであつて、昭和三十年十月から昭和三十一年五月までを第一期、同年六月から昭和三十五年五月までを第二期、同年六月以降を第三期と定め、右第一期及び第二期を通じて、収益の基礎たる屠殺家畜の取扱頭数は、抗告人主張のとおり逐年増加するものとの予想のもとに作成されているものであることは、本件更生計画及びその添付の第三表の記載内容に徴して明らかである。そうして、我が国の家畜の飼育頭数は、大平洋戦争中の乱殺と終戦前後を通じての飼料不足のため極度に減少したが、その後の政府の増産指導と相まつて復員、帰農等による農村労力の余剰や、食糧事情の緩和による飼料事情の好転等に基因して昭和二十二年、三年頃から昭和二十八、九年頃まで急激に増加してきたことも、抗告人等提出の疏明書類によつて明らかである。しかしながら、我が国における飼育家畜頭数が、抗告人等主張のとおり昭和三十一年度以降は絶対に増加しないものと認めるに足る資料は何等存在しない。反つて、農林省経済局統計調査部の調査による近時数年間の我が国における家畜飼育頭数は、次のとおりで、すなわち

乳牛

役肉牛

緬羊

山羊

昭和二八年二月

三二三

二、五〇三

一、〇九〇

三、九一六

六九三

四九二

九九四

二、一七九

昭和二九年二月

三五六

二、五四〇

一、〇二〇

三、九一六

七三三

五三一

八三三

二、〇九七

昭和三〇年二月

四二一

二、六三六

九二七

三、九八四

七八四

五三三

八二五

二、一四二

昭和三一年二月

四九七

二、七一九

八八八

四、一〇四

八九三

六三一

一、一七〇

二、六九四

(但し単位は千頭)

以上のとおりであつて、昭和二十八年以降大動物、小動物ともに概して増加の傾向にあつて、昭和三十一年度も前年度より増加しており、将来減少の年があつても、それは一時的のもので、二三年の間には更に増加するものとみるのが専門家の意見であるのみならず、需要の増加のため促成肥育の傾向があるのであつて、たとえ飼育頭数の多少の減少があるとしても、そのことは直ちに屠殺頭数の減少を意味するものでないことは、管財人提出の上申書及び第二上申書によつて一応認めることができる。してみれば、本件更生計画が我が国における家畜頭数の今後の展望という観点からみて、遂行不可能と断言することはできない。

(ハ)  次に抗告人等は、「我が国においても近年産地での屠畜が盛に行われ枝肉として大都市に搬入される傾向が顕著で、すなわち産地の飼育者において第一次的に価格を調節し、消費地の市場価格を見て産地において屠畜し、枝肉として都市に搬入し、冷蔵庫において第二次的に価格の調節が行われ、また全国的な屠畜頭数はその飼育頭数の傾向に表われているように今後永続的な増加は我が国の農業政策の現況からありえないから、本件更生計画の遂行は不可能である。」旨主張するけれども、その理由のないことは、前示(イ)及び(ロ)において説明したところに照して明らかである。

(ニ)  抗告人等は、「本件更生会社の屠場は東京都営芝浦屠場に附属した一地方屠場的存在で、昭和三十年十月より六ケ月間における大家畜屠畜頭数の中で都営芝浦屠場の屠畜制限により更生会社の屠場に流入したものは三七・二パーセントであり、この点からして更生会社の事業運営並びに更生計画の立案は、都営芝浦屠場との関連事情を離れ、更生会社屠場単独での立案は不可能である。」旨主張し、また「都営芝浦屠場は国庫補助を受け六億円の予算を以て設備が近代化され屠畜能力は倍に拡張されることとなり既に着工されている。右工事完成により更生会社の立場は不利となる。本件更生計画は以上の点に対して何等の対策もなく立案されたもので、架空数字の羅列であつて遂行不可能である。」旨主張する。本件記録特に管財人提出の各月例報告書及び前掲上申書によれば、次の事実を一応認めることができる。

本件更生会社の屠場は、荒川区三河島に存するもので、東京都の区内には他に都営芝浦屠場があり、右屠場はその設備及び屠畜能力において断然他の屠場を凌いでいる状況であるが、屠畜制限により都営芝浦屠場から本件更生会社屠場に流入したものは、昭和三十年十月から昭和三十一年三月までの間に三、六七二頭に及び都営芝浦屠場の取扱頭数の三七・二パーセントに当つているけれども、右数字は芝浦屠場に出入する業者が本件更生会社の三河島屠場において屠殺したものを全部流入とみての数字であるところ、芝浦屠場に出入の業者でその一部の仕事の根拠を三河島屠場に置いているものも多く、現に三河島の商業組合に正式加入している芝浦屠場出入の業者も十指を数える程で、芝浦屠場に屠殺余力を残している日でも三河島屠場を利用しているものがあるのであつて、本件更生会社の屠場は決して都営芝浦屠場の従属的屠場ではない。まだ、都営芝浦屠場の増設工事竣工は昭和三十五年末の予定で、その全能力を発揮するためにはなお数年を要するわけでそれまでには管財人としても三河島屠場としての市場性の確立を計ることができるものと確信し、情勢の変化に対し単に拱手傍観しているものでない。

以上のとおり一応認めることができるのであつて、右認定を覆し本件更生会社の屠場が芝浦屠場の従属的屠場であるとか、本件更生計画が抗告人等主張のとおり、単なる架空数字の羅列で遂行不可能なものであると認めるに足る疏明は存在しない。

(ホ)  抗告人等は、「厚生会社の屠場は都営芝浦屠場の従属的屠場であり、この不利な条件を考慮に容れ、なお更生会社の屠場が我が国唯一の民営屠場である特殊性を活かして資金導入により公営屠場ではできない関連事業を経営することを忘れてはならない。しかるに、本件更生計画はこれらの点を考慮することなく立案されたもので、遂行不可能なことが明らかである。」旨主張するけれども、本件更生会社の屠場が決して都営芝浦屠場の単なる従属的屠場でないことは、前段認定のとおりであるから、このことを前提とする抗告人等の主張は理由なく、また資金導入により公営屠場ではできない関連事業を経営するのでなければ本件更生会社の更生計画が遂行不可能であるとの点はこれを首肯するに足る何等の疏明資料が存しない。

(ヘ)  次に抗告人等は、「本件更生計画は、その附表第三表によれば昭和三十一年六月一日より屠殺手数料大動物一頭につき金四百円、小動物一頭につき金百七十円の現行手数料がそれぞれ一割宛値上げされることを前提として立案されているけれども、手数料値上は管財人の単なる希望的事項で農林省の認可は不可能であるのみならず、仮りに東京都だけで部分的な値上が実施されても手数料の低廉な東京都周辺の屠場で処理され枝肉として搬入されることは必至で、手数料値上という架空の事実を基礎とする本件更生計画は遂行不可能である。」旨主張するので判断するに、本件記録なかんずく管財人提出の各上申書によると、屠殺手数料の値上は不可能の問題ではなく、都営芝浦屠場においては、昭和三十二年四月一日から値上が実施されており、本件更生会社においても同月二十七日附を以て農林省より値上の認可を受けたもので、すなわち

新料金      旧料金

屠畜料 検査料   屠畜料 検査料

大動物 八〇〇円 二〇〇円 六〇〇円 二〇〇円

豚、犢 三三〇円  八〇円 二五〇円  八〇円

羊   一〇〇円  五〇円 一〇〇円  五〇円

(但し検査料は屠殺料のうちに含まれる)

以上のとおり値上が実現されたこと及び屠場への荷の動きは枝肉や副産物の市場に関連を有するもので、東京都という一大消費地を背後に持つている本件更生会社の屠場においては、屠殺料値上は生畜搬入にそれ程の影響を及ぼすものでないことを一応認めることができるのであつて、他に右認定を左右するに足る疏明は存しないので、抗告人等の右主張も採用できない。

(ト)  抗告人等は、「本件更生計画は短期間内には経済的に欠損となり事実上実行は不可能である。長期に亘る場合の実行可能限度は専門技術的立場よりみて年間大動物、一八、〇〇〇頭、小動物二二、五〇〇頭で年間収益は百四十万円となり、本件更生計画の債務弁済予定表の第三年目には年二期に分割して六百四十四万円返済予定となつているので、計画の僅か二一・七パーセントだけが可能で残り約八割は遂行不能である。」旨主張するけれども、右主張はこれを認めるに足る疏明がないのみならず、反つて本件記録特に管財人作成の各月例報告書並びに前掲各上申書を綜合すれば次の事実を一応認めることができる。すなわち、

昭和三十一年一月から同年十二月に至るまでの管財人による本件更生会社の屠場経営の実蹟によると、処理頭数は大動物一九、一六六頭、小動物二四、四九四頭、屠殺料一一八二三、七一〇円、副収入三三三二、五五〇円、総収入一五一五六、二六〇円で、経費一一〇五八四三四円を控除した利益金は四〇九七、八二六円であつて、これを抗告人等主張の数字と比較すると、頭数において年間大動物一、一六六頭、小動物一、九九四頭多く、年間収益において二六九七、八二六円を上廻つており、また右実蹟を本件更生計画に示されている予想と比較すると、屠殺料の値上が実現されなかつたにもかかわらず処理頭数は大動物小動物ともに予想より多く、屠殺料において一六〇、〇〇〇円余、副収入において六八〇、〇〇〇円余、総収入において八四〇、〇〇〇円多く、経費においては一六五〇、〇〇〇万円余多かつたため利益金は八一〇、〇〇〇円余少なかつたが、これは経費のうち設備に対する補修費に約二、〇〇〇、〇〇〇円を要したためであり、一面従業員に対しては年一回の定期昇給を行い年二回の賞与を支給し更に春秋二期の行楽を行いその給与状態は中小企業として決して悪いものでないことを考慮すれば、右実蹟は本件更生計画において示されている以上の好成績を実質的に収めえたわけである。そして右実蹟は、工場のさしたる改善もなく、また従業員の増員も行われないのみか減員によつてなお右成績を収めたもので本件更生会社の屠場能力はなお相当の余力を残しており、更に昭和三十二年度においても比較的閑散期に属する一月から四月までの実蹟は前年同期に比して多少の増収を示している。そうして、本件更生計画に示されているとおり、昭和三十一年十一月末日には優先的更生債権八七四、二八一円、更生担保権一、一六〇、〇〇〇円、一般更生債権五〇〇、〇〇〇円計二、五三四、二八一円の弁済を破綻なく完了することができた。

以上のとおり一応認めることができるのであつて、右認定の事実関係から推考すれば、本件更生計画は経済的観点からみて破綻なく実行できるものであることが窺えるのであるから、これが遂行不可能であるとする抗告人等の主張は採用の限りでない。

次に、抗告人等の本件抗告理由第二点は、本件更生計画は公正、衡平を欠くものであるというにあり、そして抗告人等はその理由として、

(イ)  資産の評価が失当であること、

(ロ)  多額の虚偽債権が計上されていること、

(ハ)  破産原因たる事実があるとしているが、その事実のないこと、

以上三点について主張しているので、順次検討してみる。

(イ)  資産の評価が失当であるとの点について、

抗告人等は本件更生会社の資産評価に営業権(その評価額は五千万円以上)を見積らないのは失当であると主張する。しかしながら、営業権は当該企業が他の一般企業に比して相当程度に高い利益率すなわち超過収益力を有する場合に初めて認められるもので、当該企業が免許事業であるとか、又は独占事業であるとかの理由だけで認められるものでなく、恒常的に超過収益力を有するに至つて問題となるのである。本件記録によれば、次の事実を一応認めることができる。本件更生会社は、栄養飼料の製造販売を主たる目的として昭和二十六年三月資本金千二百万円を以て設立せられた株式会社で、創業第一期(昭和二十六年三月十三日から昭和二十七年三月三十一日まで)において金三百八十万九百六円の損失を生じ、第二期(昭和二十七年四月一日から昭和二十八年三月三十一日まで)において金二百二万余円の利益を計上することができた。しかるに昭和二十七年六月から新たに東京都荒川区三河島に屠畜場を建設することとなり、そのため千三百万円の増資を行い資本金の合計額は二千五百万円となつた。右屠畜場建設のため意外の巨費を要し約五千五百万円の資金を投入する結果となつた。これに対応する正規資金としては、前記増資分千三百万円及び日本興業銀行よりの借入金二千万円であつたので建設資金の不足を生じ、勢いこれが獲得のため凡ゆる手段を講ぜざるをえず高利借入金を以て一時を凌ごうとしたが、その利息支払のためにも負債は増加の一路を辿り、遂に商事部門の流動資金を建設資金に流用するようになり、商事部門は資金調達のため採算を無視した取引を行うの不健全な営業をするに至つた。かくして本件更生会社は創業以来二年有半で資本金に比し固定資産約二倍に達する不均衡な状態となり他面流動資金は極端に欠乏し、その調達のため融通手形の机上操作をするようになり、図らずも融通手形の相手方会社の倒産に会つて本件更生会社も昭和二十八年十一月十四日不渡手形を出した。そして負債返済のためには屠畜場の閉鎖売却のほかなき状態であつたが、都民の食肉需要に甚大な影響を及ぼすこととなるので、更生会社として右屠畜業を継続することを決意し、本件更生手続開始の申立をするとともに、その後は人員を整理して商事部門の営業を停止し屠畜場経営のみに専念することとなつたものである。

以上のとおり一応認めることができるのであつて、右認定の事実から推考すれば、本件更生会社の営業はいわゆる超過収益力を有するものと断定しがたく、右認定を覆して本件更生会社の営業が超過収益力を有し抗告人等主張のとおり金五千万円の評価額を有することを認めるに足る疏明は存在しないので、右主張は採用できない。

(ロ)  多額の虚偽債権が計上されているとの点について、

抗告人等は、「本件更生計画添付の第四表に一般更生債権八四、四一〇、〇七一円、その元本七九、一四〇、七七三円と計上されているけれども、右金額は誇大に計上されているもので、虚偽債権が含まれている。これを例示すれば、

(1)  北海道漁業協同組合連合会は元本五、四六一、二二〇円、金利八〇四、二〇二円の債権を有するものとされているが、右連合会に対しては本件更生会社の魚粕買受代金の支払手形一通が支払不能となつており、その額面四六一、二二〇円のみが債務として計上さるべきもので、右連合会に五、〇〇〇、〇〇〇円の振出手形を預け入れておいた事実はあるが、右手形債務は別契約により実際に存在するものでなく、その金利八〇四、二〇二円も虚偽債権である。

(2)  日本飼糧畜産株式会社社長名義で二、四八一、五〇〇円の債権ありとされているが、本件更生会社と右会社とは相互に手形を交換し、そのうちの一枚を利用したときに、相互に振出手形の支払不能に陥つたので、以後は双方ともに受取手形の使用不可能となり債権債務は相殺されたのであつて、右債権元本は虚偽である。

(3)  東陽商事株式会社名義の元本債権一、一六五、〇〇〇円は、本件更生会社との間に行われたアルコール原料用甘藷の商取引により、右会社が蒙つた損害であると主張するものであるが、本件更生会社が右損害金を支払うべき原因は法律上存しないから、右債権も虚偽である。

その他不正債権の例は他にも存在する。」旨主張する。

しかしながら、本件記録特に債権届出書及びその添付書類によれば、抗告人等が虚偽債権であると主張する各債権は、債権調査期日において異議なく確定したもので実際に存在するものであることを一応認めることができるのであつて、右認定を覆して抗告人等の右主張事実を認めるに足る疏明は存しない。

(ハ)  破産原因たる事実が存在しないとの点について、

抗告人等の所論は本件更生会社の営業権が金五千万円以上のものであつて、これを積極財産のうちに加えるべきであり、また一方一般更生債権のうちに虚偽債権が多額に計上されていることを前提とするものであるが、右前提事実に関する抗告人等主張の理由のないことは前示(イ)及び(ロ)において説明したとおりであるのみならず、本件記録によれば、本件更生会社の債務総額はその積極財産の総額を超え、いわゆる債務超過の状態にあることを一応認めることができる。更に前示(イ)において疏明された事実から推考すれば、本件更生会社が支払不能の状態にあることを推認することもできる。してみれば、本件更生会社は破産原因あるものといわなければならないので、破産原因なしとする抗告人等の主張は採用できない。

以上説示のとおりであつて、本件更生計画が、公正、衡平を欠くものであるとする抗告人等の本件抗告理由第二点もまた失当として排斥を免れない。

その他抗告人等は本件更生計画が遂行不能な理由として縷々主張するけれども、前段認定の事情のもとにおいては抗告人等の主張は認めがたく、他に右認定を覆して抗告人等主張のとおり本件更生計画が遂行不可能であることを首肯するに足る疏明資料は存しない。

してみれば、本件更生計画を認可した原判決は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 浜田潔夫 仁井田秀穂 伊藤顕信)

別紙

抗告理由書

更生会社日本糧穀株式会社の東京地方裁判所昭和二十八年(ミ)第三三号更生計画案認可決定に対する即時抗告申立の理由を左の通り陳述する。

第一、原審の認可決定は、実施不可能の更生計画を認可したものであつて、取消さるべきものである。

次に計画の遂行不能なる理由を詳述する。

(一) 海外に於ける畜場の変化

(二) 我国に於ける家畜飼育頭数の今後

(三) 我国に於ける屠畜場の今後

(四) 東京都内に於ける屠畜場状況と当社工場の地位

(五) 都営芝浦屠場の屠畜能力と設備の増設工事

(六) 当社工場に於ける事業見透しに就て

(七) 管財人更生計画の遂行不能の根本的理由

(八) 認可された更生計画による最大可能限度

(九) 本計画は絶対に遂行不能であり認可すべきでない。

一、海外に於ける屠畜場の変化

世界各国共大都市の屠畜場は近時申し合せた様に屠畜能力が遊休施設化して居る。大都市の各屠畜場は当初屠畜能力に重点が置かれ、続いて生畜の取引、繋宿施設、輸送施設等が整えられて共通した時代的な流れを経て来たのであるが、今日では枝肉の冷蔵施設と枝肉の取引施設が消費都市屠場の中心を為す様に変化してしまつた。此の為に能率的な精枝の輸送事業が発達して家畜は産地の屠場で屠畜して枝肉で大都市に輸送され商品として大冷蔵車に貯蔵され価格の状態を見て市場で取引される様になつてしまつた。特殊な加工用肉の場合の外は大都市の屠場を直接使用しなくなつたので各国の大都市の屠場は例外なく閑古鳥が鳴い居る実情である。

我国に一番よく農業経済の事情が似て居るイタリーですらローマや北のミラノの市営屠場に於ける屠畜状況は能力の十分の一にも達しない様に急激に減少して既に遊休化して居り、之に替り一方附属施設であつた冷蔵庫や枝肉の取引所が益々増設され発達して居るのであつて、別紙第五図の如く此の傾向は同理由によつて我国大都市の屠畜も同様の途を辿る事は必至である。

二、我国に於ける家畜飼育頭数の今後

我国の家畜の飼育頭数は第二次大戦中の乱殺と戦後の飼斜不足で極度に減少したが、其の後農林省の増産指導と相俟つて復員、帰農等による農村労力の余剰や食糧事情の緩和により飼料事情の好転等に基因して昭和二十二、三年より別紙第一図並に別紙意見書別表一の如く増加して来たのであるが、昭和二十八、九年を限度として数的な増加は見られなくなつて寧ろ家畜の品種改良や飼育法の改善が今後の畜産発達の基礎と成つて来た。

特に此の傾向が大家畜に顕著に出て来たのは我国農業政策上の必然的な現象として農家に於ける資金力の不足が主要原因であり又反面飼料の国内生産の問題から来る飼料作物の生産及び牧草地が既に限界に来て居るからであつて根本的な農業革命の行れない限り今後も長期に亘り我国では家畜の飼育頭数の大なる増加を期待する事は不可能である。寧ろ今後に於ては原材料たる飼料の輸入よりも世界経済の原則により商品として低廉なコストで生産された外国よりの枝肉輸入や乳製品輸入が盛んになる事は明らかである。

右の事情を数字的に検討すると第一図の一及び第一図の二に於ける点線の如き結果となり次の結論となる。

昭和二十九年に於ける我国の大家畜飼育頭数は三、九一八、〇〇〇頭で此の年が最高であり昭和二十八年に比して二、〇〇〇頭を増加したのみで、その上昇率は限界に達した事を物語つて居る。前記の事情により飼料等家畜飼育の必需資材は我国では既に限界に達して居るので之をCで表わすと、二十九年に於ける増加数Aとの間の関係は次の如くである。

AαC=CK…………(Kは比例恒数)

次に同年度に於ける我国と畜数をBとすると、次の年度三〇年に於ける実数α1は

α1=3,918,000+A-Bとなり

次に統計上Bは毎年増加の傾向があるから

A-BはA-B=CK-Bとなり

CKは一定でBは増加するからA-BはOに近付く故α1は無限に三、九一八、〇〇〇頭に近付く此の原理より昭和三十一年以降に於て我国大家畜の飼育頭数が三、九一八、〇〇〇頭より増加する事は絶対にあり得ない。

三、我国に於けると畜場の今後

前述した通り我国に於ても近年産地でのと畜が盛んに行われて枝肉にして大都市に搬入される傾向が顕著である(第五図参照)それは先年国会を通過した簡易と場法により各地に於て農業協同組合等が主体となつて国庫予算の多額の補助を受け簡易と場の設置が盛に行われ、産地の飼育者に於て第一次的に価格を調節して消費地の市場価格を見て産地でと畜し、輸送ロスの少い然かも生畜の場合に於ける五分の一の輸送費で済む枝肉にして都市に搬入され冷蔵庫で第二次的に価格の調節が行われるのである。今後産地に於ける農業協同組合等の発達と共に益々此の傾向が盛んになることは諸外国の例を見ても当然である。又全国的なと畜頭数は前述第一図の飼育頭数に現われて居る様に今後に於ては水平線の維持に困難がある位であつて価格や飼料の事情等から一時的な増減はあり得ることではあるが、永続的なと畜数の増加は我国の農業政策の現況に於てはあり得ない事であり第四図の如き更生計画の見透しは絶対不可能である。

四、東京都内に於けると畜場状況と当社工場の地位

東京都内にと畜場は当社と場も含めて九と場あり、区内には当社の外に東京都営芝浦と場の二個所あるが、芝浦と場は設備並にと畜能力に於て圧倒的であつて都内の総と畜数の大部分を芝浦一と場のみで独占して居る形である。(此の事情を別紙第二図に示す)然し当社と場の外の七と場は各々都内の区地域外で特色を有して居り、芝浦と場と直接関連性を持つて居ないのであるが、当社のと場は都営芝浦と場に附属した一地方と場的存在であつて、其の点芝浦と場に対する特殊的地位にある点が他のと場と異つた性格である。今当社工場に於ける昭和三十年十月より六ケ月間の大家畜のと畜頭数の中に都営芝浦と場に於てと畜制限により当社工場に流入したものは別紙第三図並に別紙意見書附属説明資料第三表にある通り三七・二%であり、此の点よりして当社の事業運営並に之が計画立案に当り芝浦と場との事情を離れて当社と場単独での立案は意味を為さないものであり、換言すれば単独の立案は不可能であると言う特殊な地位に立つて居るのが当社と場の実情である事は明かである。

五、都営芝浦と場のと畜設備其他の大増設工事の進行

芝浦と場は品川駅よりと場内部に貨車の引込線を有し、道路其の他の立地条件は最良の地であり、東洋最大のと畜場で敷地の面積は一八、七〇四坪で(当社と場の約一八倍)建物の坪数五、六一一坪(当社の約一〇倍)で一日のと畜能力は大動物三五〇頭、小動物二、〇〇〇頭であるが、昭和三十年度の後半から全国的に畜産政策上の品種改良が盛んに行れた為にと畜数が急増したので芝浦と場に於ては常時五〇〇頭から一、〇〇〇頭の大動物がと畜出来なくて順番を待つて居る状態が長く続いたので、東京都議会ではと場設備の充実が決議され国庫補助を受け別紙意見書附属参考説明事項の一に記載の通り六億円の予算を以て設備は更に近代化され能力は倍に拡張される事になつて既に着工されて居る。右の設備の完成により外国と場に見られる様に冷蔵庫設備と冷房設備付のガラス張の枝肉市場設備が主体となり、此の新設備の面は益々発達してと畜の設備は早晩遊休化して行く事は必至であり第五図の如く消費都市えの枝肉搬入が盛になると共に逐次当社工場は不利な態勢になる事は明瞭である。

六、当社工場に於ける事業見透しに就て

当社のと場は前述の如く芝浦と場に従属的で不利な特殊事情にあるので此の点を充分に考慮に入れた上で事業計画を立案しなければならないのである。換言すれば如何にして此の不利な当社の特殊事情を打破するかに事業見透しの重点を集中すべきであり当社事業計画の成否の鍵は此の一点にあることを考察すべきである。

今其の重要点を挙げるに、能力的に地理的に当社と場は芝浦と場に従属して居ることは前述の通りであるが、芝浦は都の公営と場であるから関連事業は全部別個の民間事業会社が経営して居る。当社と場は我国唯一の民営と場であるので此特殊性を活して公営と場では出来ない関連事業を資金導入により直接と場会社で経営出来得る事を忘れてはならない。此の根本原理によつて事業計画を立案し当社の絶対的不利の条件を打破するにあらざれば事業の見透しは不可能であり、当社の更生はあり得ないのである。

七、管財人更生計画の遂行不能の根本的理由

(1)  客観的な要素の欠如

農業政策の基本理念を無視し畜産経済の実情から遊離した単なる希望的要素のみによつた計画案で何等の理論的な根拠のないものであり認可すべからざるものであつたのである。第一項に前述した通り世界に於ける大都市と場のと畜能力の遊休施設化して行くのは仮想の問題ではなく既に第五図の如く芝浦にもあらわれた現実の問題である。又第二項の我国に於ける家畜の飼育頭数は二、三年前より第一図の如く増加は停滞して寧ろ減少的な現象であり今後に於て従来の如く飼育頭数の急な増加は理論的にもあり得ないのである。以上の客観的要素から前記各項に述べた通り今後に於て大消費地たる東京都内のと畜場は逐次減少して行く事は明確に推察出来得るのである。然るに管財人の更生計画はその第(三)表の如く何等の施策も為さず逆に第四図に示す通り逐次増加すると言う全く事実を無視した根拠なき空論に等しいもので新規事業を行わず当社と場のみ例外的に増加する理由がない。

(2)  計画案の基礎が一時的現象による実数を採つて居る事は誤りである。

更生計画案附表(三)の取扱頭数の昭和三十年度後半のと畜数は我国畜産経済の特異な一時的現象で全国的にと畜数の未曾有に急増したものであり、前述した通り此間に於ける都営芝浦と場では毎日五〇〇頭から一、〇〇〇頭前後の大家畜のと殺残数が出来たので其残数の内の一部が当社工場に流入したのであり、其数は当社と畜数の三七・二%であつて(別紙意見書附表第三表の如く)此永続性のない一時的な特異の現象を以て当社の固定的実績の如く偽つて長期計画の基礎を為して居るので計画の根本に虚偽があり不可能の要素の上に立案された架空数字の羅列であつて議論の余地のないものである。

(3)  都営芝浦と場に従属した当社の不利な立地条件に対して何等の対策も考慮されて居ない更生計画である。

第四項に於て前述の通り当社と場は都営の芝浦と場に従属的営業態勢にあり乍ら、更生計画は何等此不利な事実に対する施策を立案せず、都に於て管理経営して居る公営と場と同様な単純な営業計画を立案して見た処で理論的にも実質的にも到底計画の実施が成立する理由がない。当社のと場は我国唯一の公開民営と場であるのだから其民営の特殊性を計画の面に如何に活かすかゞ計画立案者の手腕であつて認可された更生計画案は其点を全く考慮されて居ない単純なもので遂行の不可能な事は明瞭であり特殊企業である当社の更生計画案としては審議に付する価値のない愚案であつて実施すれば破綻する事は決定的事実であり火を見るより明らかである。

(4)  手数料の計算が偽りであるため、債権の弁済計画は実施不能である。

管財人更生計画の附表(三)の計画基礎は昭和三十一年六月一日より大動物一頭に付四〇〇円、小動物一頭一七〇円の現行手数料を各々一〇%の値上げを前提とした利益計算を以て計画して居り、此の僅か一〇%の値上げが計画案の中では重大な返済要素となつて居るのであるが、此の値上げは何等の根拠なき架空な要素であるのに拘らず本年六月一日より現実的要素として計上し然も東京地裁に於て認可した五月三十日より二日後には偽りである事は明瞭となるのである。

手数料の値上げと言う事は管財人の単なる希望的事項であり、一朝一夕に実現出来得るものではないのであつて寧ろ不可能に近い事が事実である。何となれば手数料の値上げは全国一齋に行わねば当社には不利となるのであるが事実上之は農林省の中間経費低減を至上命令とする畜産政策に根本的に反する結果となり、農林省の認可は不可能であり又之に反し仮に東京都だけで部分的な値上げを実施し得たと仮定しても当社と場は周辺の近県と畜場とも他面密接不可分の地理的事情にあるので当社で値上げした場合は、産地出荷者は何を以て芝浦と場に比し甚だしく枝肉市場や冷蔵庫設備も不充分な当社と場迄わざわざ生畜で持込む理由はあり得ないので、当然に手数料低廉な市川、松戸、越ケ谷、大宮、川口、等の周辺と場で処理され枝肉として搬入される事は必至であり、寧ろ値上げは当社の自殺的行為となる事は明白である。

又反面都営である芝浦と場で手数料を値上げするには現在収支が黒字になつて居るのだから赤字に転換しなければ公営なるが為に理由が成立しないのであり、仮に都営芝浦と場で手数料を値上げしたと仮定した処で都に於ては其利益金で設備を充実の為に予算を使用するのであるから、其値上げ分だけ芝浦と場は有利になり、それに比して当社の場合は此計画によれば之を返済資金に充てるのでありその分だけ逆に不利になるのであつて、手数料引上げと言う架空の事実を現実の事の如く事業計画の基礎にして居るのは明らかに偽りの計画であり、実施の不能は当然明瞭な事実である。

(5)  都営芝浦と場の増設による影響を何等考慮しない計画は根本的に誤りである。

前述の通り都営芝浦と場は設備充実の為に既に工事は進行中であり、工事の完成は現実の問題であるので当社工場は益々不利な従属的地位に置かれて行くのであつて、今後に於て現在の当社実績中より第三図の如く芝浦より流入した三七・二%の数量減は当然であり、尚其外に更に不利な要素として枝肉市場が芝浦と場内に整備された後に於ては、現在ですら市場性のない当社と場は益々不利な地方と場の立場に転落して行く事は必至であつて、当社と場で挙げて居る現在の実績より三七・二%の流入分を差引いた第三図の六二・八%の分の当社自体の実績をも工事完成後維持することは相当の困難性の伴う事であるのに管財人の更生計画は一時的に芝浦より流入した数量も包含して其偽りの数を基礎にして、尚今後に於て第四図の如く増加すると言う全く根拠なきものであり、無謀と言う外ないのである。此都営と場の増設工事は既に決定されて着手されて居る現実の要素であるのに対して何等の具体的な対策も計画面に無いのは無責任も甚しく管財人は真面目に立案したものとは考えられない事であり遂行の破綻は当然であり論議する迄もないことである。

八、認可された更生計画による実施の最大可能限度

前述の理由で東京地方裁判所で認可された管財人の更生計画の実施は絶対的に不可能であるが、今仮に当社と場の特殊的な不利な事情等を一切考慮しない単なる工場のと畜能力のみを主体にして管財人の更生計画を希望的観点に立つて最良の条件の下に営業し得たと仮定して能力面より計画の遂行限度を考察して見るに、別紙意見書の第四表は、補修費約一千万円を要する大補修工事の後に於て短期間に限り瞬間的には可能である最大量であつて、寧ろ経済的には欠損となり事実上実行は不可能である。

そこで長期に亘る場合の能力上のみの実行可能の限度は専門技術的立場より見て意見書第五表の年間大動物一八、〇〇〇頭、小動物二二、五〇〇頭が能力上最高である。

今此能力上より最高の場合を検討して見るに前記五表の如く年間収益は一四〇万円であり、管財人更生計画第一表の債務弁済予定表の第三年目(昭和三十四年)には年二期に分割して六四四万円を返済する計画である。処が前記の如く最高の能力上のみの要素を基にして算出した第五表を以てしても利益金は最高年間一四〇万円であり、計画の僅か二一・七%であり、残り約八割は遂行不能である。此事実は既に認可前に明瞭な現実の問題であり実在する明確な要素である。

昭和三十一年五月二十四日の関係人集会に於ける質問に対する裁判長の解答の如く「遂行が不能なれば其時に更生計画を変更する」と言つて居たが、遂行不能は現在の問題である。又救済の出来得る程度の更生計画ではないのである。当然に計画案を不認可にするか又は認可以前に根本的に更生計画の改変を命ずべきものである。

加うるに前各項で詳述した通り1、我国畜産業の推移2、今後のと畜形態の変化3、大都市と場の変遷4、従属して居る芝浦と場の大増設工事5、永続性のない芝浦と場より流入した一時的実績の影響の時期等不利な諸般の要素を右の第五表に加味して考察すると年間大一八、〇〇〇頭、小二二、五〇〇頭の実績を確保する事は如何に困難であるかは今芝浦と場の増設工事中で実績の四割近いものがと畜制限により流入して居る当社と場に最良の状況にある現在に於てすら右の第五表の実数を得られない事実を見ても明らかである。

要するに最高を予想した仮定の場合である第五表で利益は年間一四〇万円であり、認可された更生計画に対する約二割である。

管財人の更生計画を此儘実施したならば今後来るべき諸般の要素を検討した上の結論として返済資金どころか、収支相償えば極上であつて寧ろ欠損を招く公算の方が大である事が誤りのない真実の見透しである事が確実である。

現に意見書第三表並に第三図に示す如く芝浦と場のと畜制限による当社と場に一時的に流入した特殊事情の発生以前たる昨年(昭和三十年)七月迄は毎月一〇万円前後の取支の欠損をして居たのであつて(管財人月別報告書により明瞭)此事実を以つてしても前記の見透しに誤りはないのである。

九、本更生計画は絶対に遂行不能であるから取消さるべきものと信ずる。

以上述べた通り昭和三十一年五月三十日附東京地方裁判所で認可決定になつた日本糧穀株式会社の更生計画は理論上にも事実上にも計画の遂行は不可能であり実施は破綻することは明瞭な次第であるから何卒東京地方裁判所の前記認可決定を取消されん事を御願いする。

第二、原審で認可決定した更生計画は甚しく公正、衡平を欠くものであり取消さるべきものである。

次に計画の公正衡平を欠く主な理由を述べる。

(一) 資産の評価が失当である。

(二) 多額の虚偽債権が計上されて居る。

(三) 破産原因たる事実があると理由付けて居るも何等其事実なし。

一、資産の評価が失当である

当社に於ける資産評価に営業権を見積らないのは会社更生法第一八二条の営業価額評価の原則に反するものであり明らかに失当である。当社に於ける固定資産評価の場合最も重要な地位を占むるものは営業権である点は別紙意見書第三項に詳述の通りで公開と畜場は特殊な許可事業で法律上の諸制限の為に東京都内に於ては(特に二十三区内に於ては絶対的に)新たに設置する事は事実上不可能な事であり、又前記第一に述べた通り民営でこそ出来ると畜場中心の利益率の高い最も有利な独占的関連産業に対する基本企業である当社工場のと畜場の営業権は如何に過少評価しても五、〇〇〇万円以上であつて其点鑑定人をして公正に評価を賜れば明瞭となる事は確実であつて之を一方的に全然資産に見積つて居ないのは公正、衡平を欠くも甚しく明らかに失当である。

二、多額の虚偽債権が計上されて居る

前記の如く当社資産を不当に過少評価して然も其反面別紙意見書詳述の通り多額の虚偽債権を負債に計上し管財人の更生計画第五表の貸借対照表は虚偽資料に基くものであり、更生計画の基礎は基本的に再検討を要するものであり認可された更生計画を此儘実施する事は無意味なことであり事実上公正な実施は不可能な事である。

三、破産原因たる事実があると理由付けて居るも何等其事実なし

認可された更生計画はその第八条並に第九条の如く当社株主に対する不当な措置を目的としたもので何等の破産原因の存在がないのに故意に一方的な理由を附して計画されたもので不当であり公正、衡平を欠くも甚しいものである。管財人は会社更生法第一七七条により財産の価額評定を行い、昭和二十九年七月七日の関係人集会に於て報告された当社固定資産額と前記営業権を加算すれば資産の総額は一億数千万円となるのである。

一方当社の債務の正当なものは合計七、五〇〇〇万円であり、当社資本金二五〇〇万円を合せて一億円となるのであつて、更生計画第五表の貸借対照表は虚偽の資料に基き作成されたものであり、右により破産原因ありとの理由を附したのであるが事実は当社には何等の破産原因は存在しないのである。

別紙意見書の結論に述べてある通り認可された更生計画は失当のものであり此の点よりも取消さるべきものである。

以上第一項並に第二項で述べた理由により、原審が認可した更生計画は遂行不能なる事は明瞭であり且つ著しく公正、衡平を欠くものであると信ずるから同認可決定を取消しせられたい。

意見書

御庁昭和二十八年(ミ)第三三号日本糧穀株式会社の更生事件は会社が申立てた事になつて居るが、事実は之に反し当社に於ては取締役会の決議も無く、何等の法律の規定に合致した手続も経ず全く適格性を欠いた更生手続を会社不知の間に申立人が職名を詐称し自個の私印で申立られたのであります。

此の無権行為の原因となる点に就ては別訴を以て、現在東京高等裁判所に於て審理中であるが、これとは別に去る五月十四日御庁書記官名で当社に対する管財人の更生計画案の審理並に決議の為の関係人集会の開催通知状及び其の計画案の送達を受けました。これを一応検討し本計画案に疑義を生じ御庁書記課で当社書類の一部を閲覧した処、計画案の内容に虚偽の個所があり又公正衡平を欠き且つ遂行不可能である事が明瞭であるので左記の通り意見を陳述致します。

一、計画案の基礎となつて居る当社の債務額中虚偽なものがある。計画案の附表(四)に一般更生債権八四、四一〇、〇七一円で其の元本七九、一四〇、七七三円と計上されて居るが此金額は不当に誇大されて居り明らかに虚偽がある。

今其虚偽債権の一例を示すに北海道漁業組合連合会に元本五、四六一、二二〇円之に対する金利八〇四二〇二円と計上せるも同会に対しては魚粕買受代金の支払手形一枚が当社の支払不能になつて居り、其額面四六一、二二〇円が当社債務の元本として計上されるべきものである。尤も同会に対し五〇〇万円の当社振出手形を預入て置いた事は事実であるが、此の手形は別契約により債権債務の対照となる性質のものではない。又当然に金利八〇四、二〇二円の計上も誤りである。

又日本飼料畜産株式会社々長片山晴雄名義で二、四八一、五〇〇円が当社債務の元本として計上されて居るも前例同様虚偽債務である。当社は日本飼料畜産株式会社との間に右金額を各各振出日付を変て手形を作成して相互に手形交換を為し、其の内の一枚を利用した時に相互に振出手形の支払不能に陥つたので以後は双方共に受取手形の使用不可能となり債権債務は相殺されたのであつて右二、四八一、五〇〇円の債務元本の計上は誤りである。又東洋商事株式会社名義で一、一六五、〇〇〇円の元本が当社の債務として計上されて居るが、此の東洋商事の債権なるものは当社との間にアルコール原料用甘藷の商取引により、同社に於て損害を生じたと主張するものであるが当社に於ては何等損害金を支払うべき原因が法律上存しないのであつて、これを直ちに債務として計上することは出来ない筈であり又誤りである。

斯の如き不正債権の例示は他にあるも追而別途詳細に提出する。

二、更生計画案の基礎となつて居る資産評価に当り営業権の計上がない。

固定資産の総額を三八、三二二、一六五円と評価してあるが右資産評価に当り会社代表者の評価立会すら許さず過少評価したもので納得出来ない。

当社の資産評価の上で最も重要なものは工場に於ける営業権である。

今仮に当社の如く公開屠場を東京都内に設立せんとしても之が許可には法令による地区の制限及び都民公聴会の通過並に設立地住民の同意協力を必要とし事実上他に新たに建設する事は絶対に不可能である。

大都市に於ける此我国最初の民営公開屠場を中核とした関連産業をも含めた独占的企業の営業権は最低五千万円を下るものではないと思料せらるるので会社も立会の下に鑑定人をして公正な資産評価を指導賜り度い。

現に横浜市議会に於て数年前に市営で屠畜場の建設案を可決して居り乍ら、建設地住民の反対で今日に至るも尚着工出来ないのが実情であり如何に屠畜場の新設が至難の企業であるかは判断賜り度い。

三、本計画案による事業並に返済の計画は遂行不可能である。

本事業計画案は会社更生法による運営を何等必要としない単なる自主更生計画案である。然も此事業計画は民営による当社企業の特殊性を何等考慮せず又畜産経済の推移の実情を無視した遂行不可能な架空数字の羅列であつて、別表一の返済計画の遂行は第二回次昭和三十二年五月に於て既に遂行不可能となる事は明白である。特に本計画案は第六、七回次昭和三十四年に於て六四四万円の返済を行う計画であるが、本返済計画の四分の一の実行すら危ぶまれるものであり、管財人の本事業計画による返済の遂行は絶対に不可能で実行の破綻する事は明瞭であつて議論の余地がないのである。

尚本計画の遂行不能な数字的根拠は別紙に於て詳述する。

四、結論

以上の通り本更生計画案は法を乱用し不公正にして且つ遂行不能な案を故意に作成したものと思考される。本案を以てしては更生法一九九条に該当し審理に付する迄もないものであることを確信する。

敢えて述ぶれば本案は当社の利害関係人が屠畜場と言う特殊企業に対する関心の薄きを見て債権を誇大計上し逆に資産を過少評価して不当に破産原因ありとの理由を付し、株主及び会社当局の発言を封じて置き当社工場を完全なる自個の管理下に置き、経営の内部操作により工場営業権に対する一般の関心を薄らぎ、最も自個に於て処理に好都合の時期を選び更生計画遂行不能に陥らさしめ破産処置により善意の当社の担保債権者を含めた全債権者並に株主及び共同担保提供者たる地主、家主等の犠牲に於て当社工場並に其の営業権を不正奪取せんとするものである事は不計画の事実により明瞭である。何卒御庁に於ても本計画案を慎重御調査の上会社更生法の公正な運営を賜り度く茲に意見を陳述致します。

第一図の(一) 我国の家畜飼育頭数調(牛馬の部)、第一図の(二) 我国家畜飼育頭数調(豚、緬羊、山羊)、第二図 東京都内各屠場別屠畜数調(昭和三十年度)、第三図 当社屠場に於ける芝浦屠場より流入調(自30年10月~31年3月迄の6ヶ月間)<省略>、第四図 管財人更生計画による実施予定数表、第五図 産地屠畜と都市屠畜の変化(小畜物) 〈省略〉

更生計画の遂行不能理由の追加について

右更生会社日本糧穀株式会社の東京地方裁判所昭和二十八年ミ第三三号更生計画認可決定に対する即時抗告申立の理由に関しては曩に詳細に亘り陳述致しましたが、其の主張事実の通り既に遂行不能は現実の問題となつて来ましたので其の点について更に追加理由を陳述致します。

第一、更生計画案の実施は既に遂行が不能となつてしまつた。

一、東京地方裁判所であやまつて認可決定された本件更生計画案によればその第二条、第三条、第四条に基き其の計画案附表第一表の第二回支払期日たる昭和三十二年五月末日に一ケ年の半期分として約二百五十万円を会社更生法による債権者に対し各々支払を実施しなければならないのであるが、此の支払は全然行われず支払計画の実施は既に全く不可能に陥つてしまつたのであるが、その根本原因は管財人の更生計画が農業経済の原則を離れ畜産物の流通理念を無視した何等の理論的な根拠もない単なる架空数字の羅列に過ぎないものであるからで、此の遂行不能の事実は今後益々明瞭となつて来るので当然に本件認可決定を取消さるべきものである。

二、前項一の理由については既に前回の理由書で詳述した通り、申立人の主張事実は逐次現実の問題となつて表面化して来ましたので其の一、二の例を次に陳述致します。

(一) 曩に本件計画案の遂行不能の理由について陳述したその附属書類別紙第四図に示した通り畜産経済の原則に反した数字であつて、屠畜数が三河島の本件工場に於てのみ累年増加する理由は論理的にあり得ないと申立人は論じて居るのであるが、現実の結果として本更生計画案による本件収益の大部分を占める大動物(牛、馬、犢)の屠畜数について東京都経済局に於て調査して見た処、本計画案が認可された昭和三十一年五月末を基礎にして本年上半期たる一月より六月迄の屠畜実績を調査して之を前年同期に比較すると認可された本件の更生計画案には前記第四図の如く屠畜数は累年増加する事に立案されて居るが現実の結果は本追加理由書に添付した附属書類別紙の第六図の示す如く、逆に前年より減少して居り然も其の減少数も前年上半期に比し本年同期は二割五分も一挙に減少して居るのであり、此の現実の示す事実は申立人の主張する我国畜産経済の特殊性からくるもので管財人の立案した更生計画は専門的立場から見ると幼稚な非現実的な計画案であり、寧ろ無謀と言わねばならないものである事が明瞭となつて来た。

(二) 認可された管財人の更生計画案第一表によると前述の通り、その第二期弁済期昭和三十一年十二月より三十二年五月末日迄の六ケ月間に管財人は純利益金を以て二、四五二、〇〇〇円を昭和三十二年五月末日に債権者に支払う事を計画して之に基き東京地方裁判所で認可されたのであるが、此の弁済計画の実施は全額不能となつて現実には弁済は全然行われず、形式上は債権者に対して次の弁済期(第三期)迄延期を申出て居るが、計画案の実施不能は本件計画案の認可された昭和三十一年五月末日より僅か七ケ月である昭和三十一年十二月以後の計画の遂行が不能となつて現れて居り明らかに此の申立人の主張事実が立証されて来て居る。尤も管財人等はその弁済不能の理由を工場の修理費の支出があつたから弁済が不能になつたと言う無理な弁解をして居るが工場修理費等の如き一般維持費は計画案にあらかじめ当然見込んで立案すべきであり、逆に自ら計画案の幼稚さを立証して居るものである。

特別な天災的な原因による修理費は別として、本件の不能理由は更生計画の遂行不能を自認して居るものであり、今後に於てこそ工場修理費は逐年増加する事は必定であり管財人の認可された更生計画による弁済の実施は永久に不可能である事は既に提出した申立人の理由書の通りである。

(三) 曩の理由書第五項で述べた通り本件三河島屠場に対する主屠場の関係にある都営芝浦屠場の増設第一期工事が近く完成する事になり大冷蔵庫設備、枝肉市場設備等は今年秋には完成し更に引続き増設工事が行われるので、曩に提出した理由書の附属書類別紙第三図の如き主屠場たる都営芝浦より本件三河島屠場えの屠畜の流入は芝浦の設備充実と共に今後に於ては絶無となり、累年増加すると称する管財人の更生計画案の数字とは逆に三河島屠場の屠畜数の減少する事は火を見るより明らかな事実であり、認可された更生計画の実施を今後に於て遂行可能ならしめる要素は理論的にも又実質的にも全く見当らないのである。

(四) 更に本件計画の遂行不能の重大なる現実の要素として東京近郊都市に大屠場が建設されて居ることである。横浜市営で東神奈川に、大宮市営で同市内に又千葉市営で同市に、その他松戸市営屠場の設備拡張等各々大設備で最新式大屠場の建設が既に着手されて居り、之等が近く各々操業を開始すると曩に提出した理由書の附属書類別紙第五図で述べた通り近郊で屠畜処理され枝肉で商品として都内市場に般入される数の増加する事は当然であり益々本件の如き都内屠場の価値は逐年減少して行き其の存立理由を失い極度に経営難の苦境に陥る事は明白たる事実であり、畜産経済の推移を無視した幼稚極まる管財人の更生計画は全く非現実的な無能の策と言わねばならない。

三、前述の通り本件三河島屠場は今後益々不利な経営要素が増大して東京地方裁判所で認可された管財人の更生計画の遂行は既に現在不能であるばかりでなく将来に亘り実施は絶対に不可能である事は論ずる迄もない事実であるので、本件計画案の立案に当つては曩に御庁に提出した申立人の理由書第六項に述べた如く、本件工場は我国唯一の私営公開屠場であり他の大屠場は全部経営上の利益を必要としない公営屠場である点に本件屠場経営計画の主眼を致すべきである、本件屠場の経営は私営屠場なるが為に利益率の高い関連産業を起し私営企業としての特殊性を大いに生かして他の公営屠場と本質的に異る利益を主とした独特の経営計画を立案せねばならないのである。然るに本件管財人の更生計画は一般の公営屠場と全く同一の経営形態を其の儘更生計画と称して幼稚な知識で屠畜数のみの増加すると言う一方的な搬空数字を羅列したものを以て債務の弁済計画案を作成した処に根本的な矛盾と誤算があるので本計画案の実施が不可能であることは寧ろ当然であり、此の申立人の主張する基本原理を御明察の上本更生計画案は御庁に於てその認可決定を取消しせられ度い。

第二、更生計画案の基礎資料に虚偽があり公正、衡平を欠くものであるのに管財人等は何等の措置も施さない。

一、曩に御庁に提出した理由書並に其の別紙附属書類の更生計画案に対する意見書の中に陳述してある通り計画案の基礎である債権額中全くの虚偽債権が多数計上されて居り、此事実については昭和三十一年五月二十五日東京地方裁判所民事第十七号法廷で本件更生計画案の審理並に決議の為の利害関係人集会が開催された際、申立人は其の席上右意見書を提出して虚偽債権に対する会社の意見を陳述したのであるが、其の際は別途処理する旨を約束して居り乍ら其の後に於ても何等の措置も為さず甚しく多額の虚偽債権を基礎に立案された儘で本更生計画案は認可され、これにより計画の実施が遂行されて居るのであるから明らかに公正、衡平を欠き之が認可は失当である。此の点よりも当然に本件更生計画の認可決定は取消さるべきものである。

二、本件更生計画案第三条によれば更生債権元本合計七九、一四〇、七七三円として計上して居るも右金額の内で申立人に於て既に判明して居る虚偽債権額は一五、八二四、五五五円であつて更生債権全額の二割以上の虚偽債権を計上されて居るのである。計画案に因れば三一パーセントを直接弁済することに計画されて居るが其の額は四、九〇五、六一二円となり之が不正に支払われることになり、又更に重大な事は従来の株式を千分の一に減資して新たに払込みを行わないで右債権七九、一四〇、七七三円の内その五七パーセントを同案第九条により株式に振替えて資本金を四、五〇〇万円とする計画であるが右虚偽債権の五七パーセントは九、〇一九、九九六円となり四、五〇〇万の右資本総額の二割以上が不正株式であり、商法上株式会社の機関の運営は不可能となり特に更生手続終了後に於ては総会決議は虚偽株主の為に商法違反となり重大なる結果を招来する事になるのであり、甚しく公正衡平を欠く無謀な計画案であり当然本更生計画案の認可決定は取消さるべきものである。

三、虚偽債権の内訳

既に判明して居る右の虚偽債権元一五、八二四、五五五円の内訳は左の通りであるが、詳細は申立人(抗告人)提出の昭和三十一年五月二十四日付更正計画案に対する意見書第一を御参照賜り度い。

北海道漁業組合連合会 五、八〇〇、〇〇〇円 (此金額の手形は同聯合会に預け入れたもので別途契証もあり全く債務にあらず)

日本飼料畜産株式会社 一、一五一、五〇〇円 (此の金額の手形は相互に相殺済で債務にあらず)

第一物産株式会社 三、二五八、〇五五円 (此の金額は他社の債務で日本糧穀の債務でない)

東洋商事株式会社 一、一六五、〇〇〇円 (全然無関係のもので債権債務の対照にならない)

大日本製糖株式会社 三、六〇〇、〇〇〇円 (日本糧穀株式会社の増資払込金で債務にあらず)

三菱商事株式会社 二五〇、〇〇〇円 (同右)

日本甜菜製糖株式会社 五〇〇、〇〇〇円 (同右)

日本麦芽工業株式会社 一〇〇、〇〇〇円 (同右)

合計 一五、八二四、五五五円

右の外にも本件更生計画案に使用した資料を調査すれば尚虚偽債権は増大するものと確信するも、相手方で資料を保管中で申立人には詳細な右の外の資料が無く立証出来ませんが右に記載した一五、八二四、五五五円の金額は明白な虚偽債権である事は絶対確実でありますから何時でも右の事実を立証致します。

以上第一、第二で陳述致しました通り明らかに遂行不能であり、公正衡平を欠く本件更生計画は会社更生法第二三三条に定める規定に反してあやまつて認可決定になつたものであるから取消せられたい。

日本糧穀株式会社更生計画案

日本糧穀株式会社更生計画案 目次

緒言

第一章 債権処理ノ条項

第一条 租税等更生債権ノ弁済

第二条 更生担保権ノ弁済

第三条 更生債権ノ弁済

第四条 劣後債権ノ弁済

第五条 共益債権ノ弁済

第六条 弁済資金ノ調達方法

第七条 予想超過収益金ノ使途

第二章 資本ノ減少、新株ノ発行

第八条 資本ノ減少

第九条 新株ノ発行

第九条の二 株主ニ対スル利益配当

第三章 役員ノ選任

第十条 役員ノ選任

第四章 定款ノ一部変更

第十一条 定款ノ一部変更

第五章 其ノ他ノ事項

一、会社債権ノ処理

二、会社ノ貸借対照表

緒言

当会社ノ更生ニ就イテハ、一部ノ重役及ビ従業員ノ執拗ナル反対妨害アリタルコト及ビ事業ノ性質上、其ノ経営ハ容易ナラザル為メ、予想外ノ困難ニ遭遇シタケレドモ、経費ノ節約、人員ノ整理、経営ノ合理化ニ依り漸ク黒字状態ニ立直ツタ。

本事業ニハ新ニ融資ヲ要シナイノデ、将来此ノ方針ヲ堅時シテ行ケバ、更行ヲ期待シ得ルト信ズル。

以下会社更生法ノ条項ニ従ツテ、債権処理方法其ノ他ノ計画案ヲ申述スル。

第一章 債権処理ノ条項

(租税等更生債権ノ弁済)

(修正条文)

第一条 国税徴収法及ビ国税徴収ノ例ニヨツテ徴収シ得ルモノデ、届出ノアツタ合計金百七拾四万八千五百六拾壱円也ハ、別紙第一表ニ記載ノ通リ、昭和三十一年十一月末日及ビ昭和三十二年五月末日ノ二回ニ分割納付スルモノトシ、国税ニ付イテノ昭和三十年六月一日ヨリ更生計画認可決定ノ日迄ノ利子税ヲ除キ、其ノ余ノ更生手続開始決定以後ノ利子税、加算税、延滞金等ノ債権ハスベテ之レヲ免除スル。

(更生担保権ノ弁済)

第二条 更生担保権ハ、別紙第一表ニ記載ノ通リ、元本合計金弐千五百九拾五万五千円也ヲ、昭和三十一年十一月末日ヲ第一回トシ、爾後毎年五月末日及ビ十一月末日ニ分割弁済シ、昭和三十八年十一月末日限り完済スルモノトシ、利息金弐百四拾四万九千九百五拾円也ノ内金七拾四万四百四拾円也ヲ、昭和三十九年五月末日ヲ第一回トシ、爾後毎年五月末日及ビ十一月末日ニ分割弁済シ、昭和四十二年十一月末日限リ完済スルモノトシ、其ノ余ノ債権ハ免除スル。

但シ、更生担保権者ノ担保物件ハ従前通リトスル。

(更生債権ノ弁済)

第三条 更生債権元本合計金七千九百拾四万七百七拾参円也ノ内金弐千四百六拾四万参千八百八拾円也(債権元本ノ三一%)ハ、別紙第一表ニ記載ノ通リ、昭和三十一年十一月末日ヲ第一回トシ、爾後毎年五月末日及ビ十一月末日ニ分割弁済シ、昭和四十二年十一月末日限り完済スルモノトシ、金四千五百万円(債権元本ノ五七%)ハ後記増資新株式ニ振替へ、其ノ余ノ元本及ビ利息損害金ノ債権ハスベテ免除スル。

(劣後債権ノ弁済)

第四条 更生担保権者ノ劣後債権ノ中金八百四拾九万四千六拾参円也ヲ、別紙第一表ノ二ニ記載ノ通リ、昭和四十二年十一月末日ヲ第一回トシ、爾後毎年五月末日及ビ十一月末日ニ分割弁済シ、昭和四十四年十一月末日限リ完済スルモノトスル。

其ノ余ノ劣後的更生債権ハスベテ免除スル。

(共益債権ノ弁済)

第五条 共益債権トシテ更生手続開始日以降昭和三十年九月三十日迄ニ支払ツタ総額及ビ仝日現在未払ノ共益債権ノ額ハ別紙第二表(A)(B)ノ通リデアル。

昭和三十年九月三十日現在未払ノ共益債権金弐百七拾八万七百五円也ハ、昭和三十一年五月末日迄ニ随時営業ノ収入金ヲ以テ弁済シ、昭和三十年十月一日以降、更生手続終結日迄ノ間ニ生ズル共益債権モ同様営業上ノ収入金ヲ以テ随時弁済スル。

(弁済資金ノ調達方法)

第六条 弁済資金ハ原則トシテ事業運営ニ依ル収益金ヲ以テ之レニ当テル。

猶ホ、収益ノ予想ハ別紙第三表ノ通リデアル。

(予想超過収益金ノ使途)

第七条 更生計画ニ於テ、予想サレタ額以上ノ収益ガアツタ場合ハ、原則トシテ予定弁済額ノ確保ノ為メ、別途積立金ト為シ置キ、万一返済ニ不足ヲ生ジタトキ之レヲ充当スル。

但シ、臨機必要アルトキハ、裁判所ノ承認ノ下ニ、別途ニ使用スルコトヲ得ルモノトスル。

第二章 資本ノ減少、新株ノ発行

(資本ノ減少)

第八条 千株ノ株式ヲ併合シテ一株トスルコトニヨリ資本ノ九割九分九厘ヲ減少シ、減少スベキ資本ノ額ヲ金弐千四百九拾七万五千円トスル。

更生計画認可決定当時ノ株主ハ、決定ノ日カラ百日内ニ、株式併合ノタメ、会社本店ニ株券ヲ提出シナケレバナラナイ。併合ニ適シナイ株式ガアルトキハ、管財人ハ裁判所ノ許可ヲ得テ処理スルモノトスル。

(新株ノ発行)

第九条 一般更生債権ノ一部タル金四千五百万円ニ代へテ、新タニ払込又ハ現物出資ヲサセナイデ額面普通株式九拾万株(一株ノ金額五拾円)ヲ発行シ(本計画案認可ノ日ニ)一般更生債権者ニ各債権額ニ按分シテ之レヲ割当テル。

(加入条文)

第九条ノ二 更生債権及ビ更生担保権ノ弁済ヲ終ルマデハ、株主ニ対スル利益ノ配当ハ行ワナイ。

本計画ノ認可決定ニヨリ株主トナツタ者ニ付イテモ同様デアル。

第三章 役員ノ選任

(役員ノ選任)

第十条 会社ノ役員ハ、管財人ニ於テ裁判所ノ承認ヲ得テ、選任スル。

役員ノ任期ハ一年内ノ株主総会迄トスル。

右任期中ト雖モ管財人ハ裁判所ノ承認ヲ得テ、其ノ選任ノ取消又ハ変更ヲ為スコトヲ得ル。

第四章 定款ノ一部変更

(定款ノ一部変更)

第十一条 定款第一条「当会社は日本糧穀株式会社と称する」トアルヲ「当会社は株式会社三河島ミートプラントと称する」ト変更スル。

定款第三条「当会社は本店を東京都千代田区に置く」トアルヲ「当会社は本店を東京都荒川区に置く」ト変更スル。

第四章「取締役、取締役会及び監査役」トアルヲ「取締役、取締役会、監査役及び顧問」ト変更スル。

第十五条ノ次ニ「第十五条の二 三名以内の顧問を置くことを得る。其の選任及び任期は取締役会に於て定める」ノ一条ヲ附加スル。

第五章 其ノ他ノ事項

一、(会社債権ノ処理)

更生会社ノ債権ノ回収ニ就イテハ、努カシテ居ルガ、回収困難ナルモノ多ク、更ニ一層ノ努力ヲ為スモノトスル。

二、(会社ノ貸借対照表)

此ノ計画ノ基礎トシタ更生会社ノ昭和三十年九月三十日現在ニ於ケル貸借対照表ハ別紙第四表ノ通リデアル。

修正第一表

(第1表) 債権弁済予定表、(第1表) 債権弁済予定表、(第1表ノ2) 更生担保権者ニ対スル劣後利息債権弁済予定表、(第2表) 共益債権内訳表、(第3表)収益予想表、(第4表)貸借対照表〈省略〉

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